4年に1度の台湾総統選は現職の民進党・蔡英文総統が最大野党・国民党の韓国瑜候補との一騎打ちを制し再選を果たした。
今回の選挙における国民の最大の関心事は、“中国との距離感”だった。中国の習近平国家主席は(1)平和統一を実現(2)台湾版「一国二制度」を検討(3)「1つの中国」の堅持、武力使用は放棄せず(4)中台経済の融合促進(5)同朋意識と統一への共感を増進という5つの「台湾政策」を提示、香港やマカオで導入している一国二制度を用いて台湾を“統一”したい考えで、中国融和路線を目指す韓氏は「中国との経済協力も進めないなら台湾は世界で孤立してしまう」と訴えてきた。しかし、香港では激しいデモが続いていることもあり、「中国に近づきすぎるといつか台湾が飲み込まれてしまう」「中国の統治下では言論の自由もない。民主主義を守りたい」という有権者の強い危機感が独立志向の蔡氏に追い風となった格好だ。
元朝日新聞台北支局長で台湾を長年取材してきたジャーナリストの野嶋剛氏は「今までにないくらい、アメリカと中国の代理戦争的な要素が強い選挙になった。台湾の人にしてみれば、“アメリカを選ぶのか。それとも中国を選ぶのか”という二択を突き付けられたような形だ。これまで中国は台湾との国交がある国に圧力をかけて断交させたり、観光客を半分に減らしたり、さらには台湾海峡に空母を航行させたりといったプレッシャーをかけてきたが、結果として上手くいかず、台湾はアメリカと歩んでいくことを選んだということになる。当初は韓さんがリードしていたが、香港問題もあって、この1年で形勢が完全に逆転してしまった。台湾の選挙では珍しい事態で、蔡さんはある意味で非常にラッキーだと言える」と話す。
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